ひと昔前の映画/異なる者たちとの共存とは。今、改めて「第9地区」 2010年 アメリカ他
「第9地区」/2010年公開
■あらすじ
南アフリカのヨハネスブルクにエイリアンが飛来した。彼らは宇宙船内で栄養失調に陥り、政府はそれを保護。保護後もエイリアンは宇宙に帰る気配がなく、政府は彼らを住まわせる場所として、人とは隔離した地区=第9地区を構築。
第9地区は次第にスラム化し、また地区周辺ではエイリアン絡みの犯罪が多発。それにより、地元周辺住民(人間)からの非難排斥運動が激化していく。政府はエイリアン(その時点では180万体)の居住区を移すことを決定し、民間会社に委託。その責任者となる人物を軸に、ストーリーが展開していく。
監督:ニール・ブロムカンプ 製作国:アメリカ・ニュージーランド
■感想
異なる者への差別、政府のご都合主義、ゆがめられたマスコミ報道、研究という名の人を人と思わないモルモット的な扱いの酷さ。他方、保護が生む増殖。そして政府、受託会社の上層部、地元マフィア、エイリアンそれぞれの思惑…。あげればキリがないくらいに、メッセージがちりばめられ、考えるきっかけを与えてくれる。
怒涛の様に走り抜けていく展開の後の、エンディングの切なさ。見終わった時の余韻が半端ない。
南アフリカは、現実でもスラム化した地区があり、その地区の住民は犯罪をすることでしか生きるすべのない環境があったりと、社会課題となっている。中東では武装勢力の支配が優勢になり、欧米では難民の取扱いを巡って各国が揺れている。海外の情報は映像越しで見ているため一部しか認知できておらず、現実はもっと凄惨だと想像される。
本作は映画公開から約10年経過している。しかし、世界で起きていることや、年々宇宙が身近になりつつある状況などを念頭に改めて鑑賞すると、公開当時に見た時よりも意義深さを感じた。
▽当時の予告編