人類への絶望と希望が行き来する「Interstellar(インターステラー)」/2014年 アメリカ
あらすじ
雨が降らず砂漠化した地球。砂嵐が頻繁に起き、口と鼻を覆っても肺に砂が入る。疫病で次々と作物が死んでいく、荒廃した大地。
元エンジニアで宇宙飛行士でもあった父:クーパー(マシュー・マコノヒー)は、食料危機に瀕している地球でコーン農家を営んでいた。荒廃した地球では農家がもっとも必要な職種だった。「適応して生きるんだ。俺たちみたいに」。
そんな中、娘:マーフの部屋の本棚から決まって同じ本が落下する現象が続く。マーフは「幽霊」と呼ぶが、クーパーは元技術者として、観察記録し分析することを進める。
ある砂嵐の日、偶然マーフの部屋が砂まみれに。砂の積もった形状から、クーパーは重力の異変が起こっていることに気付く。「バイナリだ」(二進法。"0"と"1"で示されるデータ形式)。解読すると、それは特定の場所の座標を示していた。
示された場所に向かう二人。現地には、既に廃止されたと思っていたあの機関が存在していた。そこで荒廃した地球を救う手立てを聞かされ、選抜隊として地球を飛び立つことを決意するクーパー。しかしその裏には隠された真実があり、クーパーは一旦絶望するも事態の改善に奮闘する。地球に残された娘のマーフも、様々な葛藤を抱えながら未来に向かい道を切り開いていく。
人類の行方は・・・。
監督:クリストファー・ノーラン
Recomend Points
現状認識と描かれる希望
人の想像を超えた、果てしなく広がる宇宙。その一角、一惑星の「地球」にいるという事実。人の手が入り過ぎ、早晩訪れるだろう地球という惑星の限界。物語の序盤は荒廃した地球の姿が描かれている。
リアル社会でも深刻な温暖化で氷河が溶け、例年の異常気象で毎年のように各地で洪水が発生。数年スパンで深刻なウイルス感染も蔓延している。アフリカ大陸ではバッタが異常発生。人の生活が脅かされている。地球各地で異常現象が起こっている今、遠い未来ではないのでは、という危機感を持つ。
一方で、物語では希望が描かれている。重力のコントロールだ。それにより居住惑星の選択肢が拡がり、火星に留まらず、人類の活路が見い出せる(地球から脱出する前提ではあるが)。重力がコントロール可能になると、時間軸もコントロールできる。つまり、時空・年代を超えて移動ができるという(宇宙での高速ワープ、タイムマシンのイメージ)。本作中ではこれが重要な要素として描かれている。
荒唐無稽な話に聞こえるかもしれないが、実は重力コントロールの技術は物理学では以前から研究されているテーマだという。実用化は未来の話だと思うが、人類の進化が「時間」という大きな概念を変える可能性があることに、SF好きとして心が躍った。
サウンドトラック
クリストファー・ノーランの監督作品「ダークナイト」(バットマンシリーズ)などで音楽を担当した、ハンス・ジマーが本作もサントラを手掛けている。
ダークナイトでは、ジョーカーの底知れぬ不気味さ、バットマンの覚悟を表しているような重低音のサウンドトラックが特徴的だった。本作でもハンス・ジマーのサントラがストーリーを力強く後押ししている。
特に印象に残るのは以下2曲。
お互いに想い合いながらも、時に信じる想いが変動したり感情的になったりと、交錯する想いを表現しているような「Cornfield Chase」。裏切りのあとのリカバリーでハラハラする局面を盛り上げる「No Time For Caution」。映画を見た後、サントラでその場面が想い出されて楽しめる。
映像美
もちろん、映像美も秀逸。
成層圏を超えたあたりから、地球と濃紺の宇宙とのコントラストが美しい。宇宙好きにはたまらない。無音になる瞬間があり、さらに引き立てる。土星も美しく描かれている。そして、謎多きブラックホール・ガルガンチュア。重要なカギを握るブラックごホールも艶めかしく描かれている。荒廃した地球とのギャップも印象深く残る。
2020年5月31日、スペースXが民間企業の有人飛行を初めて成功させた。近い将来、一般人が宇宙を旅行するのも夢では無くなるとのこと。 自分の目で宇宙を見にいける時代が近づいている。
宇宙を含めた、人を取り巻く環境に敬意を払うことを肝に銘じながら、好奇心は捨てずに生きていきたいと思う。
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BBC NEWS