価値観が裸にされるような、歯に衣着せぬエッセイ「無趣味のすすめ」/2011年 村上 龍 著
概要
2009年3月~2011年3月の間に幻冬舎へ寄稿した、村上龍のエッセイをまとめた本(『GOETHE』(男性月刊誌)の連載記事が中心)。
着飾ることをせず、「わたしは絶対にアドバイスなどしたくない。隠蔽されがちな事実を、正確に伝えたいと思っている(【アドバイスについて】より抜粋)」、潔い村上龍の考え方、生き方の一部に触れることができる本だ。
テレビ東京のビジネス番組「カンブリア宮殿」で、多くの経営者に触れて実感したこと、質問をぶつけてみて得た回答から考えたこと、なども盛り込まれている。
※番組自体ももちろん見ごたえあるが、締めの編集後記もハードボイルドな村上龍節が味わえておすすめ
Recomend Points
本質を探る探求心、伝えようという使命感
この本から見えた村上龍の、世の中で一般的に言われている通説に対して調べ、装飾を剥がして本質を探る、事象を自分自身で捉え問題提起する、というスタイルは一読に値する。
1テーマにつき3~4ページほどの文字数ですぐに読めてしまうが、心に刺さるフレーズ・思考があり、読み返したくなる。
Favorite フレーズ
●もっともやっかいで、もっともむずかしく、もっとも面倒な選択肢が正解ということだ。(【決断する力】より)
●モチベーションという概念は、希望につながっていなければならない。(【モチベーションと希望】より)
●読書が重要なのではない。情報に飢えるということが重要なのだ。(【ビジネスと読書】)
前後の文脈がないとやや唐突な表現になり、村上龍の真意が伝わらなくなるため、気になった方は本書を読んでいただきたい。
実業家、村上龍に触れる
小説家として芥川賞はじめ数々の賞をとり映画監督なども務めている、文化人として知られる村上龍。本書は実業家・仕事人としての姿が垣間見られる。
前述のカンブリア宮殿でもその一面は見れるが、仕事に対して高いクオリティと覚悟を持って取り組んでいる様子が書かれており、それもまた興味深い。それが本書のタイトル、「無趣味のすすめ」にも表現されている。そして何より歯切れがいい。
真の達成感や充実感は、多大なコストとリスクと危機感を伴った作業の中にあり、常に失意や絶望と隣り合わせに存在している。つまり、それはわたしたちの「仕事」の中にしかない。
【無趣味のすすめ】より